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データ分析や機械学習やスクラムや組織とか、色々つぶやくブログです。

チームマネージャーに読んでほしい一冊。『対話型ファシリテーションの手ほどき』を読んだ。

チームマネージャーのロールとして、チームメンバーと1on1ミーティングをやったり、振り返りのファシリテーションをしているわけですが、より気づき・学びを増やしてチームが成長していくにはどうしたらよいかを日々自問しています。うまくできないことも多いです。

そんな中、親しき知人に紹介してもらった書籍『対話型ファシリテーションの手ほどき』がとても勉強になりました。

https://www.amazon.co.jp/対話型ファシリテーションの手ほどき-中田豊一/dp/499081472X

ファシリテーションの書籍はたくさんありますが、著者の成功体験だけに基づく主観性の強いビジネス書であったり、具体的な問いかけ方法がなくイマイチ実践まで結びつかなかったりすることが多かったです(個人調べ)。本書籍は、自分にはとても納得性の高い内容であり、体系的に具体的な対話方法まで記載されており、すぐに実践してみたいと考えています。

対話型ファシリテーションとは

対話型ファシリテーションは、正式な方法論の名称はメタファシリテーションといいます。ファシリテートする側が、当事者に対して事実のみを質問していきます。 このやりとりを通じて、当事者が思い込みに囚われることなく自分の状態を正確に捉え(気づき)、当事者自らが問題解決に必要な行動変化を起こすように働きかける方法です。

以下でも述べますが、できるだけ5W1Hの「Why」と「How」を質問せずに、「When」「Where」「What」「Who」などの事実を聞く質問を繰り返すことで、事実を積み上げ当事者を思い込みから解放し、気づきを導きます。具体的なテクニックをいくつか書いていきます。

Whyと聞かない

自分のこれまでの会話を想像してください。何か相手が語り始めたら「なぜ?どうして?」と原因や動機を尋ねることが多いと思います。

対話型ファシリテーションの手法では、英語の5Wのうち「なぜ?どうして?(Why)」を聞かないようにします。「なぜ?どうして?」と聞きたくなったら、それを一度飲み込んで「いつ?どこで?何を?」という質問に置き換えて質問します。試しに「一番最近いつ起きました?」「その前は?」と質問をしてみてください。

私たちは、特にあまりよくないことに関して「なぜ?」と聞かれたら、つい言い訳をするようにできています。本当かもしれないし、言いつくろいかもしれませんが、重要なのは語っている本人もその真偽が定かではないということです。

なぜ?と聞くことで相手の自分勝手な安易は原因分析をその場で始まることもあります。人間は、自部の都合の良いように解釈したがる傾向にあり、良い結果については自分の努力や能力、悪い結果については外的要因のせいにしたがります。課題分析を手助けする上では、こちらからWhyを尋ねないのが鉄則です。

Howの質問はナンセンス

先日、北海道出張から帰ってきた同僚に「北海道どうでした?」と質問をしました。いわゆるHowも使い方を誤るとコミュニケーションの阻害要因になります。

自分:「北海道どうでした?」

同僚:「よかったです」

両者:「...」

Howの質問は、尋ねる方は気軽かつ安易に質問できますが、答える方には手間・コストがかかる面倒な質問です。あんまり興味ないけど挨拶代わりに聞いとくか感じが出てしまっていますね。相手を戸惑わせたり、確信のない答えを強要したりする可能性が高い、良くない質問です。 ここでも、Whyを除いた4Wで質問することが重要です。

一般化された質問はNG

A:「週末は何をして過ごしたいですか?」

B:「週末はいつも何をして過ごしていますか?」

C:「週末は何をして過ごしましたか?」

A・B・Cの質問は、順に感情意見・考え事実を質問しています。Bは一見事実を質問してそうですが、相手の希望や思い込みも含めた意見が得られるでしょう。このような「いつも」「最近」などの一般化された質問は、相手の現実を浮かび上がらせることを阻害します。

当事者自らが気づくことが行動変化のエネルギー

問題解決の行動変化は、当事者自らの「気づき」が行動変化のための大きなエネルギーになります。それをわかりやすく伝えるための表現が次の4つです。

  1. 聞いたことは、忘れる
  2. 見たことは、覚えている
  3. やったことは、わかる、身につく
  4. 発見したことは、使う。

自分で見つけたこと以外はほとんど忘れるのが人間であり、忘れてしまうと行動変化に結びつけることができません。つまり、相手自身が答えを見つけるまで、粘り強く働きかけることが重要です。また、自分で何かを見つけたときは、気づきの喜びにも満たされます。

焦らず我慢強く、待つ

当事者自らが気づくことが重要ですが、気づくのには時間がつきものです。ファシリテータ自身は焦らず我慢強くどっしり構えて待つことが重要です。 ついつい、ファシリテータ側が待てずに答えを言ってしまうことってありませんか?質問に対して相手から具体的な反応がない場合でも焦らず待ちましょう。例えば、「自分のことで煮詰まったら、身近な人の成功事例を訪ねてみる」など、質問を変えてみるのも方法論の1つです。

質問の難易度を意識する

自分自身もこの本を読んでいて「質問攻めにして、相手を不快にさせないか?」が少し心配になりました。刑事ドラマの尋問のようになり、相手を委縮させないかと心配になります。そうしないための解決方法も記載されています。

1つ目は、相手のことに関心を持つことです。そのようなマインドセットを持っていれば、こちらが考えるほど嫌がらないとのこと(おそらく経験則として)。2つ目は、相手が答えられる質問をすることです。一生懸命考えを巡らせなくては答えられないような質問や、嫌なことを思い出させる質問は避け、心理的に答えやすい質問をすることで、相手にも心を開いてもらいます。

本当に解決すべき問題かを探る質問

相手から「〇〇の件で困っている」「●●が問題だと思う」などの発言が出てきたら、それが本当に解決すべき問題かを探るために、以下の質問をするとよいでしょう。

  • 一番最近、誰がどのように困ったか
  • それを解決するために、どんな努力をしてきたか

まだ、誰も行動に移していない時点では、問題ではなく願望の可能性もあり、それを見極める必要があります。ファシリテーター自体が「本当にそれは問題ですか?」と直接尋ねることはやめましょう。そう問うことは、ファシリテータ自身の考えや意見を直接伝えることになります。

まとめ

1on1や振り返り作業を効果的に実施することで、チームのパフォーマンスを高めることに自分は貢献したいです。この書籍は、そんな自分の現状に非常に手助けになる1冊になりそうです。

書籍を読んで感じたのは、練習することが、ファシリテーションの上達の近道そんな環境って誰もが得られるわけではないということです。自分は幸運なことにロールがあり1on1で週に数名と対話をする場があるので、この場を有効活用して自身も成長していきたいと思います。

また、これまで「なぜ?」と聞くことが多かったと思いますが、頑張って事実質問に置き換えてみます。おそらくこれまでと違ったパターンのコミュニケーションが生まれそうで、それも楽しみです。